呉のやぶ

呉の秋祭りのシンボル的存在、「やぶ」の今と昔をお伝えします。

小祭り(後編)

小祭りもいよいよクライマックス。

前回、11月3日の午前の動きを中編として紹介しましたが、午後はさらに分刻みの度合いを増します。

改めて、残る半日の予定を確認しておきます。

 

12:45-13:10 千福

13:30-14:00 三津田橋

14:15-14:30 山崎屋→平原神社

14:50-15:30 三条商店街→鯛乃宮神社

15:45-17:45 龍王神社

18:00-18:15 伏原神社

 

いずれも5分のイン・アウトの遅れが次の予定に大きな影響を与えてしまうほどの過密ぶり。

心して臨んだ午後、最初の訪問地は本通7丁目の千福前。

(正確には三宅本店の本社事務所前です)

毎年13時からここで平原神社の鹿田迫奉賛会と畑祭礼委員会の出発式が行われています。

当然、やぶも勢ぞろい。

ただ、せっかくなのでいきなり千福前に陣取るのではなく、千福を目指して移動中のやぶの姿をとらえたいもの。

そこで昼食を早めに済ませ、予定より15分ほど前倒しでこの界隈へ移動しました。

最初に目に飛び込んできたのは、畑のやぶ。

ちょうど裏手の醸造工場の敷地内から出てくるところでした。

 

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しばらく付いて動いていると、先ほどのやぶの一匹が煙草を吸っている場面に遭遇。

 

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よく見ると、煙草を竹製の細い筒に繋いでいます。

後で関係者の方に聞いてみたところ、これは市販のものではなく全て手作り。

創意工夫の賜物です。

いつ誰が「開発」したのか分かりませんが、少なくともその方が祭りに関わるようになった20数年前には、既に普通に使われていたとか。

竹製とあって、やぶとの相性も良さそうです。

続いて移動したのが鹿田の休憩所となっている長迫小学校前。

正門前で待ち構えていると、一番やぶがゆっくりとした足取りで向かってきました。

 

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続いて、二番と三番がそれぞれ正門の外へ駆け抜けていきました。

 

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いずれも一瞬の出来事。

何とか後ろを追いかけ、追いつくことができました。

そしていよいよ千福前での出発式。

何人かの方の挨拶が続く中、鹿田と畑のやぶが向き合い、緊迫感が増します。

最後は恒例の一番同士の握手。

互いの睨み合いが続き、緊迫感がピークに達します。

 

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一触即発の雰囲気でしたが、無事に出発式も終わり、双方、宮入りに向けて出発しました。

その背中を見送り、次に向かったのが三津田橋。

毎年ここで鯛乃宮と山手のやぶが対峙します。

そのため、その少し前に行って鯛乃宮のやぶをじっくり見るのがここ3年の定番コースになっています。

到着したとき、ちょうど三条方面から二河川筋に向かって来るところでした。

 

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その後、鯛乃宮の一団は15分ほど時間をかけ、ゆっくりと川筋を北上。

三津田橋に着いたとほぼ時を同じくして、反対側の橋のふもとに山手のやぶが姿を現しました。

 

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双方、今にも飛びかかろうかという勢いで前のめりになっているのをやぶ付きの人たちが必死で抑えています。

 

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やがて怒号も収まり、落ち着きを取り戻すと、互いの一番が相手方のやぶが振り下ろす竹を順次、受け止め始めました。

 

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それが終わると一番やぶによるやぶの舞いが披露され、動から静への時間帯に変化。

最後はお互い歩み寄り、頭上で竹を交わしました。

 

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見物客からの拍手に包まれた瞬間を見届けて、次に向かったのが西畑の山崎屋前。

先ほど出発式を終えて宮入りへの行脚を開始した鹿田迫奉賛会と畑祭礼委員会に追いつくためです。

そこから平原神社までの坂道は徒歩10分もかからない距離。

早足で登っていると、最初に目に留まったのが鹿田の一番。

胸筋が一際目を引きます。

 

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また、俵を揉む畑の一団にも遭遇することができました。

 

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そのまま鹿田と畑の宮入りを待ち、鳥居前での俵もみも見ていきたいところでしたが、今年は「例年とは少し違った背景で写真をとりたい」と思っていたので、断腸の思いで当初の予定にしたがい三条商店街へ移動。

慌ただしい動きを経て、鯛乃宮の一番と再会を果たしました。

 

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宮入り寸前の場所で俵を揉む様子も三津田橋上では見られない新鮮な光景です。

 

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およそ40分余りの見物を終え、次に向かったのが龍王神社。

ここで俵もみを観るのは今年で4回目。

およそ1時間半を超える壮絶な俵もみは、「呉の秋」の見納めに欠かせないひと時になっています。

例年、16時頃から俵もみが始まっていますが、いつも15分程度早めに神社に着くようにしています。

ここは見物客も多いので、近くで観るにはそのくらいの時間から境内にいる必要があります。

待つこと5分。

見物客の目が一斉に鳥居の方へ向かいます。

龍王会のやぶの到着です。

最初に視界に飛び込んできたのは澤原家の面。

 

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俵もみが始まるまでの間も片時も目が離せません。

至近距離で見る鈴木家の面の形相は「凄い」という形容しかできません。

 

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ほどなくして、俵もみが開始。

迫る俵みこしに対し、一番(田島家面)、二番(澤原家面)、三番(勝田家面)が揃って構える姿は、本当に絵になります。

 

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ここから先は私の言葉は無用の長物。

激しい1時間半を写真だけで振り返ります。

じっくり見ていると、現場の「音」が聞こえてくるかのような迫力です。

 

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俵もみが終わる頃にはすっかり日も暮れ、あたりも薄暗くなっています。

日中は汗ばむほどでしたが、この時間帯は急激に気温も下がり、小祭りの終わりのときが近づいているのを感じさせます。

そんな中にあっても一縷の望みをかけて、伏原神社へ向かいました。

歩くこと15分。

もう完全な夜と言ってもよいほどの暗がりの中、俵もみを行っている様子が照明の光に浮び出されていました。

間に合った。

と思ったのも束の間、境内に到着したと同時に俵みこしがやぶの壁を突破しました。

本当に最後の突入の瞬間だったようです。

こうして、「呉の秋」を締めくくる熱く濃密な2日間が幕を閉じました。

 

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