呉のやぶ

呉の秋祭りのシンボル的存在、「やぶ」の今と昔をお伝えします。

吉浦八幡神社の祭り

10月第一土日とその翌月曜日は、吉浦の蟹祭り。

例大祭が行われる日曜日は、迫力ある「ちょうさい」など見所満載ですが、月曜日も実に個性的な祭りが行われています。

吉浦駅構内の看板には、「後日祭」として「午後五時から」としか書かれていませんが、地元の子どもたちにとってこの日のメインイベントは、昼間に行われる「鬼廻り」です。

 

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文字通り、「鬼が追いかけて廻る」、もしくは「鬼から逃げて廻る」のいずれか、あるいはその両方が由来と思われます。

その象徴的な場となっているのが、吉浦小学校の校庭。

この度、事前に学校側の許可を得て、その一部始終を見学させていただきました。

 

さて、その鬼廻り。

この日は平日ですが、今年も午前中で授業はお終い。

その上で、「鬼を見たくない」、「鬼に追いかけられたくない」という子どもたちは、学校側の配慮によって裏門から先に下校します。

この日は全校児童340人のうち、50人近くの児童が先に帰ったとのこと。

その後、予め決められた時間になると、正門が開門し、鬼が一気になだれ込んできました。

 

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この時点で、子どもたちはまだ教室にいたのですが、構わず、校舎の手前まで走ってきます。

 

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そして馬喰(ばくろう)も。

 

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その異様な光景を恐る恐る教室から見入っている子どもたち。

 

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しばらくすると、校舎から子どもたちが出てきましたが、鬼の集団が視界に入るや否や一目散に逃げていきました。

 

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しかし、この日の段取りは、最初に鬼と児童の記念撮影となっています。

まずは学校側の指示にしたがって、鬼がきちんと整列。

 

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そこへ六年生から一年生まで順々に加わります。

初めはおっかなびっくりだった子どもたちも、段々と馴染んできました。

最後に先生方との記念撮影を終え、ここからいよいよ追いかけ廻し、逃げ廻る時間帯。

 

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子どもたちの歓声交じりの悲鳴が、「鬼廻り」の雰囲気を創り出します。

ここで重要なのは、追いかけているのは「やぶ」ではなく、あくまで「鬼」だという点。

鬼廻り保存会の会長もその点を強調していました。

吉浦の「伝統とこだわり」です。

そんな中、こうした場の空気にたじろぎ、固まってしまっていたのがこちらの「子ども」。

 

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お父さんと思しき方の指をぎゅっと握って、追いかけ廻す鬼をじっと見ていました。

足がすくんでいるようにも見えましたが、しばらくするとカメラを向けられていることに気付いたのか、お父さんの指から離れ、精一杯のポーズをとってくれました。

 

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将来、立派な「鬼」になることでしょう。

 

学校を取り巻く環境も昔とは随分と変わっている中、ここ、吉浦小学校においては、まず何よりも子どもたちの安全を最優先しつつ、地域と協働して地元の伝統を守っていこうとしています。

郷土の文化伝承の一つのあり方を見るような思いで、校庭を後にしました。

 

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