暦の上で秋を迎えるのは、8月7日頃の立秋ですが、猛暑の続く日本で秋の訪れを感じるのは、もう少し先。
とりわけ、ここ呉の地において本格的な秋を実感するのは、やはり何と言っても秋祭りのシーズンでしょう。
太鼓や笛の音はもちろんのこと、やぶの姿は「呉の秋」の代名詞です。
今年も秋分の日に鳴り響く「秋到来の号砲」を聞きに、宇佐神社の祭り*1に足を運びました。
さて、「呉のやぶ」を撮るようになって、今秋で5年目を迎えますが、今シーズンの目標はこれまでと違う写真を一枚でも多く撮ること。
そのためには、
- 撮影の時間帯を変える
- 場所を変える
- アングルを変える
の三点が重要で、早速、この日、(一部において)その実践を試みました。
朝から降り続けた雨がほぼ止むのを待って鍋入りしたのが、正午過ぎ。
北区、中央区、西区ともに昼休みの時間帯ですが、「新たな撮影場所」を探し求める時間に当てました。
国道487号線沿いを神社近辺から宮原方面に向かって歩いていたところ、しばらくして目に留まったのが中央区の法被を着た男性。
すかさず歩み寄って、中央区の休憩場所について尋ねてみると、山側方向を指差しながら「この上の方よ」と教えてもらうことができました。
礼を言って、細い小道を登ること数分、悠然と坂を下る一匹のヨダレに遭遇。
すかさず、民家の塀に身を寄せ、シャッターを切って撮ったのがこちらの一枚。
背後の山、趣のある瓦屋根。
これらと一緒に収まったヨダレを撮るのは初めてで、まさに今年の目標とも言えるような一枚になりました。
その後、坂を下り続けるヨダレの背中を見送りながら、次なる撮影地点について思いを巡らせていたところ、目の前の民家に住む男性に声をかけられました。
「お兄さん、なんでこんなところで写真、撮ってるの?」
「いやー、ただの趣味です。色んな神社の祭りに出かけて行っては撮ってるんですよ」
そんなやりとりに端を発し、気が付くと祭り談義に花が咲いていました。
すると、「うちの二階から見える神社の眺めがええけぇ、上がって撮りんさい」とまで言われ、お言葉に甘えることに。
お陰で呉湾と江田島を背景に宇佐神社の全容を写真に収めることができました。
そんな偶然の出会いも今や「祭り小旅」の楽しみの一つです。
続いて向かったのが国道487号線沿いの道。
時刻は既に13時を回り、囃子の音が賑やかに響いています。
あいにく再び小雨が降り始めましたが、そんな様子も貴重な背景。
いつもと同じ場所ながら、ちょっと違う一枚になりました。
そうこうしているうちに、北区の一行とも遭遇。
宮入までもうあと僅かです。
ここまで来ると、今年の俵もみをどのアングルから撮るのかそろそろ決めごろです。
例年だと、階段下の「ベストポジション」に立ち、ひたすらシャッターを切り続けるのですが、それだといつもと似たような写真ばかりになってしまいます。
いくらかでも変化を付けようと狙った場所が、階段上の鳥居の脇。
まずは、俵もみの陣容が整う前に一匹のやぶが後ろを振り返った瞬間を撮りました。
また、所定の位置に付こうと階段を登るカッパも一枚。
北区の伝統的なやぶです。
しかし、いざ俵もみが始まってしまうと、さすがに階段最上部からではやぶの後姿しか撮れません。
やはり定番の正面からの写真も必要と思い、神社の裏口から回って階段下に立ち位置を求めました。
既に大勢の人でひしめき合っていましたが、何とか人と人の合間にレンズを構えることができ、写した一枚がこちら。
雨で塗れた石段上で激しい俵もみが行われていたため、やぶの衣装や竹が例年以上に泥にまみれています。
そんな俵もみを撮り続けること、およそ30分。
無事にとんぼがやぶの一団を押し退け、最上段の鳥居をくぐることができました。
拍手と歓声に包まれる中、すかさず自分も階段を駆け上がり、俵もみを終えたばかりのやぶを一枚。
そして、北区による俵もみが行われた後は、中央区と西区がそれぞれ宮入。
ここでようやく西区のニグロを撮ることができました。
俵もみを終えて、20分余りが経過すると、まず北区のやぶが神社から引き上げていきました。
階段の中ほどでカメラを構えていると、こちらに気付いたやぶがギロリ。
こうした睨まれる側の不安を掻き立てるような「静の溜め」もやぶの魅力の一つです。
その後、北区に続いて、西区のやぶも神社を後にし、最後に残ったのは中央区。
やはりヨダレはつがいが揃うと一層絵になります。
こちらは右が雄で、左が雌。
こちらは左が雄で、右が雌。
これを見てもやはり、やぶと瓦は、抜群の相性です。
最後は「定番」のいが餅を帰って帰路へ。
これから約40日間、呉のまちが秋色に染まります。
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