「屋根は地域の風景です」。
そう語るのは安浦で瓦施工業を営む上田健一郎さん*1。
この度、その上田さんが手がけたのがやぶ瓦。
これは一度詳しく話を聞かねばと、早速訪ねてみました。
すぐさま目に留まったのが、種々様々な瓦。
恵比須様の顔をあてがった瓦*2
小槌を中央にあしらった瓦
聞くと、これらは全て鬼瓦とのこと。
鬼瓦と言うと、鬼面とばかり思い込んでいましたが、実際は鬼だけでなく、七福神や小槌などバラエティに富んだ素材が、厄除けや縁起物として使われているそうです。
最近でこそあまり見られなくなったものの、一昔前であれば浦島太郎も鬼瓦の一つとして屋根を彩っていたというほど、元々自由度の高い「建材」のようです。
とりわけ、菊間、淡路、三州のいぶし瓦はそうした特徴が顕著で、複雑な模様が掘り込まれたものも多いとか。
ならば、呉という土地柄、(鬼ではなく)やぶが家々の屋根から睨みを利かしている光景があってもいいのではないか。
そう考えた上田さんは「神宿る瓦の会」を立ち上げ、「日本鬼師の会」とのコラボでやぶ瓦を企画したそうです。
写真提供:上田健一郎さん
実際にやぶ瓦を制作したのは、菊間瓦の鬼師、菊地晴香さん。
その最初の三枚が上田瓦商店の玄関先にも飾られていました。
何を隠そう、既に私もその一枚を自宅に飾っています。
あいにく瓦屋根の家ではないので、設置場所は玄関ホール。
亀山神社でお祓いを受けてから掲げたやぶ瓦は、凛としたオーラを放ち、降りかかる厄を全て追い払ってくれているかのようです。
本来祭りの日しか拝めないところにやぶの価値を感じていますが、こういう形でならやぶの希少性を損なうことなく、毎日の暮らしの中でやぶを身近に感じることができます。
「沖縄ではシーサーが鎮座する屋根が景色に溶け込んでいるように、いつか呉でも屋根上のやぶが町の風景を織り成す日が来るかもと想像したらわくわくします」。
上田さんの語る未来に共感する一日になりました。
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