今年の宇佐神社の祭りでは、中央区のヨダレや北区のカッパなどについては、我ながらいい写真を撮ることができました。
一方、西区のニグロに関しては、正直、満足のいく写真が撮れたとは思っていません。
もちろんこればかりは、運と技量で決まるので致し方ありません。
そんな私にとって、リベンジの機会となったのが、10月第4日曜日の森土恵神社の祭り。
この祭りには、宇佐神社の祭りに出た西区のニグロ2匹が再度、登場します。
同じ面が別々の祭りで二度出されるというのは、珍しいケースかもしれません。
さて、例年だと13時頃、祭礼一行に合流し、やぶの撮影を行っているのですが、今年はできるだけいつもと違った時間帯に訪ね、これまでとは異なる背景の写真を撮ることを目標にしています。
そのため、この日、警固屋入りしたのは、11時30分頃。
正午に某家の前をニグロ2匹が出発し、主に警固屋第10区*1を回る予定と聞いていたので、余裕を持って昼前に入りました。
目的地の某家まではそこから徒歩5分程度。
とりあえず現地でのんびり待とうと思ったそのとき、向かう先とは反対の方向から太鼓の音が聞こえてきました。
この音を聞くと、居ても立っても居られなくなる性分のため、引き寄せられるように音の方角へと向かうと、小道を歩くやぶの集団と遭遇。
思ってもみなかった撮影機会の到来に、これは幸先の良いスタートと喜びました。
いずれも緑色の法被が目を引く森土恵会のやぶで、この日は警固屋第9区を回っていると聞きました。
一行の背中を見送ると、今度は国道487号線を舞々尻川の河口付近まで南下。
この辺りに目的地の某家があります。
行ってみると、祭りの世話役の方が既に何人か集まっていました。
その中にいた一人の女性が私の顔を見るや、「お兄さん、去年も観に来とったよねー」と笑顔で一言。
森土恵の祭りを観に来るようになって今年で三年目になりますが、初めて訪ねた一昨年、その女性に神社の境内でおでんを振る舞ってもらったことがあります。
下の写真はそのときのおでんです。
確かよごろの日の午後、何の当てもなく、神社を訪問。
あいにくやぶは見当たらず、そこにいた世話役の女性たちにやぶはいつどこで見られるのかあれこれと質問していたところ、「まあ、食べんさい」と皿にたくさん盛ってくれたのです。
熱々のおでんが今は心温まる思い出になっています。
この"おでんの年"を機にその翌年も祭りを観に行ったことから、「祭り好き」の一人として覚えてもらったのでしょう。
ありがたいことです。
近年でこそ、森土恵神社の祭りというと参加する人も随分と多くなっていますが、その昔は神社のごく周辺に住む人たちだけで行っていた時代もあったと教えてくれたのもその世話役の女性でした。
こうした何気ない会話は、祭りにおける最も楽しい「取材」です。
さて、そんな談笑をしていたところ、この日のお目当てのニグロ2匹がこちらに向かって歩いてきました。
幸いにもここも小道。
小道はやぶを撮る上でお気に入りのスポットです。
逃げ場の少ない状況で怖いものに対面するという「絵」が好きなのです。
こちらに向かってやってくるニグロを見て、最初に目に留まったのは衣装の色。
宇佐神社の祭りで見たときよりも随分と淡い色をしています。
宇佐神社の祭りで撮影した西区のニグロ
世話役の男性の方によると、淡い色の衣装の方が古いものだそうです。
そのせいか面の古さとよく調和し、一層雰囲気が漂っているように見えます。
実際、世話役の男性の方もこの衣装がお気に入りとのこと。
話は衣装に留まらず、「我が町のニグロ」のかっこ良さについてもたっぷりと話を伺いました。
誰しも地元のやぶが一番贔屓で、それを熱っぽく語るその様が、何よりもいい写真を撮ろうと思うモチベーションになります。
その後、間もなく一行は出発。
町回りをしながら、神社を目指します。
道中は急な坂道が多いものの、健脚のやぶは疲れるそぶりも見せず、どんどん登り続けます。
途中、俵を揉むこともしばしばなのですが、終わった後も平然としています。
所々の休憩場所では器用に煙草を吸っていました。
それにしても煙草を吸う姿がこれほど似合う「役者」がいるでしょうか。
スティーブ・マックイーンにも負けていません。
休憩を終えると、一行は再び坂道を登り、いつの間にか見晴らしの良い中腹の道へと出ました。
対岸は江田島。
これほど眺めの良い町回りは中々ないでしょう。
しばらくすると、再び休憩ポイント。
瀬戸内の多島美だけでなく、日新製鋼の原料バースも視界に入るなど、呉らしい眺望です。
その後、来た道を引き返すこと数分。
途中、山間に森土恵神社が見えました。
遠く離れていてもこの日が祭りであることは一目瞭然です。
しばらく歩くと、いつもと同じ場所で森土恵会のやぶとも合流。
小さな子どもたちも多く、祭りらしい賑わいを一層感じます。
ここで時計を見ると、時刻は13時30分。
もう間もなく揃って宮入を目指すというところで、この日は一行に別れを伝え、風情に満ちた坂道を下って帰りました。
Copyright(c)2016, kureyabu All Rights Reserved